剥げているのだ。
直そうと思えば直せるが、そういう代物でもないし、直されたいとも思ってないだろう。
人間、どんな劣悪な環境でも、ひとつ慣れを覚えてしまうと、すんなり生きてしまえたりする。
40、50になって、かさつきやすくなった手を見て驚いたり、白髪が増えたり、徐々に自分の変化に気づくのではなく、何かをきっかけに気づかされるのだ。
ブレスレットの留め具が外れてコンクリートの道路に落としたとき、私は「あ」っと思って振り返るのに、数秒を要した。
それがどんなに大事なものなのかを思い出してから拾い上げるまでの一連の出来事が、まるで靴紐を結びなおすかのごとく、なんでもないことのように思えた。
部屋に帰り、手を洗い、うがいをする。
ポットの湯を沸かし、ネットをつなぎ、バッグを下ろす。
机と向き合って、好きな音楽を流し、仕事の資料に目を配らせる。
何も頭に入ってこない。
少し時間をおいて、心の整理をしないといけない。
PR
COMMENT