A○Bの比較的下位ランクの子と売店で会い、N○Cのバックダンサーに廊下で頭を下げられる。
グラさんをかけて理解不明なほどの露払いを連れる芸能界屈指のご意見番と食堂で会い、二丁目に出没するマダムキラー演歌歌手と会い、トイレ先で新婚デュオの片方とぶつかり、玄関口でE○○○Eの出待ちをしている暇人どもの嬌声を避けながら西口に出る。
そう、この年の仕事は終わったのだ。
午前0時半、電車を逃し、次に来るのは1時過ぎ。自動販売機でココアを買い、両手で暖をとりながら電車を待つ。
昔から、ひとけのない駅ホームで電車を待つのは嫌いではなかった。
田舎の町であれば、電車の本数が少ないから、「この場所を離れる」という実感が強い。
都会はそうでもない。電車の間隔は短いし、本数も多いし、すぐにどこにでも行けてしまう。
すぐにどこにでも行ける。
この感覚も、どうやらおかしくなってきている。どこにも行けないくせにだ。
どこにも行けないくせに、いつでもどこにでも行けることにし、そうしたことも忘れかけている。
分別のない事実を、分別めいた感覚で理解して、面倒なことを投げている。
宿題は明日やればいいと、やる気もないのに、やらなくてはならない日を待っているだけ。
夏休みに終わりはある。しかし人生に締め切りは暗示されない。
昔から後衛的ではあったけれど、聞こえよがしなだけで、ただの消極的になりつつある。
誰かに引っ張ってもらわないと、こんなにも動けない。
チャンスも不幸も、手繰り寄せた類のものではなく、導いてくれる人が導いてくれたものばかりだった。
と、分別めいたことで締めくくって、何をとち狂ったのか世の中で一番会うべきではない人に会おうとしている。アポもとったし、土産も用意した。
13回目にはまだ早いが、私たちはもう、節目や時期を待つ立場にない。
鬼が出るか蛇が出るか。
PR
COMMENT