焼香の香気が、薄明に落ちる。
本家の人間が、心なしか減った気がした。
気配を殺してるわけでも、匂いを消しているわけでもない。確実に、その場所から消えていた。
大好きだったチマキをご両親に食べてもらおうと、季節はずれだが笹の葉を買った。
端午の節句になると、私以上に敏感に声を上げた。チマキが食いてえと。
笹を洗い、冬場なので3時間ほど水につける。あれは、笹臭いくらいの香り付けが好きだった。
たぶん、血がつながってるなら好みは似たようなものだろう。
駝鳥の卵が本場の味だが、鶏卵のほうが好きだった。
落花生、下ごしらえした角煮、乾燥玉葱、鷹の爪を包み、タコ糸で締める。
蒸している間、いたまないうちに連絡を取らねばならないだろうと、とっさに思い至る。
奥様が亡くなられたというのに、自分の心のどこかで確実に存在しているだろう虫が、ほくそ笑んでいるようで、気持ちが悪い。
恩を感じているはずなのに、気づかないふりをして憎しみが先立っている。どうしてこんなに醜いんだろう。
年を重ねても、汚い部分はそのままでもいいから、なけなしの純粋な心は捥がれたくない。
かつて死ぬほどにまで呪い倒した相手に、救いを求めるのだから、人生はわからない。
最近、すてきな出会いがある。
懐かしい大切な人とも会うし、既視感を覚えるほどの親しみを持つ新しい出会いもある。
いろんなことを報告しなければならない。
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