忍者ブログ

ALTEREGO

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


わかりやすく

 「わかりやすく書く」ということはもう、いまさらと思う人は多いと思うけれども、行動に移すとなるとなかなか難題でもある。たいていの文章読本は、「平明」「平易」を強調し、「達意」が大切だと説いている。
 このことだけはどうしても相手にわかってもらいたい。その一途な思いがあるからこそ、文章に命が吹き込まれるのだ。あなたの思い、あなたの考えを間違いなく伝えること、それは文章の基本中の基本。
 さまざまな文章技術が役に立つ。が、それを超えて大切なのは「これだけは何としてもあなたの胸に刻みたい」という切なる思いだ。
 英語の不得手のおじさんがニュージーランドの牧場にホームステイをした。このおじさんは農家の人だった。稲作と農家では、経営の形態は違うが通ずるところもあったのだろう。何日間かを過ごして、別れるとき、おじさんは「パラダイス、パラダイス」といって泣き、見送る側と固い握手をしたという話を聞いた。どうしてもわかってもらいたいという思いは、こういう形でも通ずるのだ。伝えたい切なる思いさえあれば、英文法なんかは二の次なのだろう。(……例外もあるだろう。だから人は懸命に対処しても人間関係にこじれが生じるのだから)

 残念ながら、私たちのまわりには「なにを読み手の心に届けようとしているのか」がさっぱりわからない文章が少なくない。たまたま目にしたお役所の文章をあげてみる。
 「地域づくり支援室では、四局、一丁の職員と外部専門家が連携して、人づくりを通じた地域づくりの推進のための新たな支援策の企画、立案、地方公共団体等からの相談への対応や要望などの把握、専門家の派遣、関係機関との仲介支援、取組の全国への普及等を行い、教育関連の総合的な支援体制の設備を図ることにしています」
 失礼ながら、これを書いた人には「このことはなんとしても伝えたい」という深い思いがあったのだろうか。「人づくりを通じた地域づくり」とはなんだろう。神様じゃあるまいし、人や地域をそんなにも簡単につくれるものなのだろうか。揚げ足とりだといわれるかもしれないが、わたしがいいたいのは「地域づくり」「人づくり」という安易な言葉に寄りかかるなということだ。そういう決まり文句を言わずに、読む人が「あ、そういうことなのか」と合点できるような文章を書いて欲しいのだ。
 わかりにくい文章を書いてしまう。難解な文章を書いてしまう。そこには、さまざまな自意識があるだろう。「どこからも文句のでないような、ソツのない文章を書く」「こんなに難解なこともわかっているんだと誇示したい」「わたしの考え方の深さは、容易にはわかるまい。わからなくていいのだ」などの思いがアタマをもたげると、文章はへんに歪んでいく。それは文章だけでなく、演説だってそうなのだ。

 浅田次郎も、「わかりやすさ」を大切にしている人だ。
 「いい文章はわかりやすい。古今東西、名文とわれるものにわかりづらい文章など、ひとつもないのである」
 「さりとて、改まって文章を書こうとすれば、誰しもふと衒いが頭をもたげ、ともすると意思伝達どころか過大な自己表現になってしまう。あるいは、何とかわからせようと思うあまり修飾過剰となり、かえってわけのわからぬ文章になる。世に悪文といわれるものは、だいたいこの二通りである」
PR

COMMENT

Name
Title
Mail
URL
Color
Emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Comment
Pass   コメント編集用パスワード
 管理人のみ閲覧

TRACKBACK

Trackback URL:
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
(12/10)
(08/13)
ANN
(05/19)
(04/04)
(01/05)
(01/03)
(12/24)
(10/20)
(10/09)
(08/21)
<<memo  | HOME |  正確に>>
Copyright ©  -- ALTEREGO --  All Rights Reserved
Designed by CriCri / Photo by Melonenmann / Powered by [PR]
/ 忍者ブログ