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トマト

 冷蔵庫から戻した干し椎茸を刻む。沸騰したボウルに11分茹でのパスタを入れる。ここからは7分以内の勝負だ。
 熱したフライパンにオリーブを垂らして熱し、スライスした大蒜とタカの爪を炒め、ひき肉をぶち込み塩こしょう。焦げ目がついたらオニオンと椎茸を入れ、固形コンソメと椎茸を戻した際の旨みを半分入れ、蒸気を飛ばすように強火で炒める。
 早く仕上げることができればここでまな板や包丁を洗うことができる。
 パスタを急いでフライパンに移し、残りの椎茸汁を全部ぶちこんで弱火でかきまぜる。麺の芯がふやける前にケチャップを適量、味を確かめながら強火で仕上げる。面倒なときのナポリタン頼みである。
 椎茸は生より干されたもののほうが旨みが強い。ただし強制的な国産の干し椎茸は若干、値が張ることをお忘れなく。それから干し椎茸を戻したものは、熱を加えてからが本当の旨み成分がでるらしいが、すぐに逃げてしまうとのこと。香りを立てるか、総仕上げに使うべし。
 それにしても椎茸にはすばらしい名前がある。日本にはしばしば、名産とよばれる一級品には脱帽するほどのネーミングがあてられている。私が今回使ったのは、「魂の欠片」である。


 身世話をみれば潔癖症、ものごとへの捉え方をみれば神経質。そんな男が主張した今回のテーマは着色料だ。私が饅頭の包みを開いていると、横から手が伸びてきて饅頭をひったくった。なにをする、と私が抗議を訴える前に、彼は「赤102が入ってる、成分表をよく見ろ」と言った。

 人の影響力とはすごいものである。スーパーに並んでいる食品郡は、メーカーこそ違うにしろ内容は似たり寄ったりだと思っていた。しかし、私が牛乳に手を伸ばせば「期限を見ろ」と鼻で笑い、ちがうメーカーの牛乳に手を伸ばすと「それは牛乳じゃない、牛乳に見せかけた乳製品だ。生乳じゃない」とため息をつく。

 ヒスな男、といささか見下していた私ではあったが、今でこそ彼の老婆心には感謝しているのである。日本では認可されてはいるものの、危険性の是非には関与しないといったスタンスの産業下で、なにを頼りに買い物をしたらいいかといえば自分の知識以外なにもないのである。

 鱈子の異様なほどの赤み。海沿いの港の競りなどで見られる、ほんのひと刷毛オレンジがさした自然の色とは程遠い。しかしスーパーは購買者が買ってくれるのであれば、いくらでも安くする。安くするには……当たり前のサイクルである。
 二倍、三倍もするオーガニック野菜を意識的に買う一般庶民がどれほどいるか。考えてみれば、昔、田舎の畑の畦道にぽつんと立つ苔むせた小屋(無人販売)には、無農薬で作る野菜ばかりが置かれていた。あの値段、あの量、あの鮮度、あの無害っぷり、今でこそ考えられないほどの宝石である。
 そりゃあ非喫煙者が、わざわざ喫煙席をさがして坐ったりはしない。しかし食材はそういうわけにはいかないのである。

 男は言う。どうして魚売り場には、芝だとかが敷かれてんの。大根の千切りが添えられてるの。
 いい着眼点である。それは貴様が一番よく分かっていることじゃないか、と言おうとし、それは私が色彩検定で学んだことであって一般常識ではなかったことに気づいた。見せたい色があるなら引き立て役がいる。

 なぜマクドナルドのイメージカラーは赤いか知っているかと訊く。「客の目を引くからか?」
 いい観察力ではある。が、キホンそういうことであるならば、すべての店の看板は赤をおろすだろう。
 ファーストフード店は全般に赤い。ラーメンも赤い。こういう店の共通点とは。
 赤について考える。
 赤といえば、情熱の赤、炎、といった能動的なイメージがある。信号の赤を見ていても、人の集中力はよく働いているものである。青のときよりもだ。
 つまり、落ち着かないのである。落ち着かない看板を立てていれば、そりゃあ早く店を出たくなる。もし店側がそれを意図しているのであればどういうことなのか。つまりは客の回転数である。

 逆に客の単価を上げようとするなら、寒色系もしくは落ち着いた色合いのものを店に施す。ファーストフード店であっても、たとえば単価の高めなフレッシュネスバーガーやモスバーガーは赤をあまり使おうとしない。

 そんな話をしていると、赤好きは落ち着かないってことなのか? と赤好きな男はいたって落ち着いた風を装ってつぶやく。私はそれについては言及はせず、人それぞれじゃないの? とかわすとあからさまに落ち着いた様子を見せたので釘を刺した。赤好きは鈍感野郎に多いらしいと。「俺はトマトは嫌いだ」らしい。
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