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思考

 映画はフランス映画しか観ない、とか、電車には乗らない、移動は車で、とか。二十歳をすぎて金髪ってださいよな、とか、カラオケ嫌い、絶対いかない、とか。どうでもいいようなことだけれど本人には最重要事項、ということがままある。私はそういう、ささやかなことを自分の真理として持っている人は好きだ。持っていない人は嫌いかと問われると、そういうわけではないが、信用をかちえやすいのは前者だと思う。
 たとえばの話。友人は「男は絶対トランクス」派で、けれど彼はトランクスしかはいたことがないのではなく、中学生のときブリーフを経験済み、その便利さも不便さも承知しており、さて自分で下着を買う年齢になってトランクスを選ぶわけである。だから、ブリーフ派をも彼は否定しない。ブリーフ一辺倒の人より、こちらのほうが、笑顔が優しい。
 さまざまな下着を試したほうが人生に深みが出るという話ではもちろんなくて、これは考え方の問題である。あるものごとを、引き受けて、疑って、ほぐしてまるめて、整理して、もいっぺん引き受ける。そのほうが、ただ引き受けるより奥が深く、単純におもしろいのだ。
 私が海外での暮らしや旅で、またはここ最近のマスク事件についてはっとしたのは、「自分なりの考えかた」の危険性についてだ。件のような自分のちっぽけな真理が、世界の共通真理になってはいけないのである。トランクスを主張するためには、ブリーフも認めなければ。マスクの習慣のない国においての、日本人学生が祖国からマスクを強いられることの肩身の狭さを私たちは想像したことがあったか。
 考える、問う、疑う、言葉を使う、人(他の言葉、他の考え)と出会う、ということを、私たちはずっと以前からやってきた、と、思い出させてくれるのは『雲』という、ヘッセの空にまつわる詩と散文をまとめた写文集である。
 たったひとつの、空、というものに関しておそるべき言語力と比喩を持ち、空をスクリーンにして記憶を、過去を、恋愛を、後悔を、希望を見るのである。
 空のみからつむぎだされるこの作家の言葉の群れに圧倒されるが、けれど私たちもまた、経験がある。頭上の雲を見て、動物や友達や家や花、あてはまる何かを捜し、隣に立つだれかとあれこれ言い合い、風に流されかたちを変えた雲を迫って、さらに言葉をついやして飽きなかったことが、なかったか。
 空を見上げることが哲学になりえるし、下着を選ぶことが真理にもなりえる。考えるとはこういうことだ。私たちの持ちえる種類の自由のことだ。
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