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蛇にピアス

 現代を生きる若者の暗部、具体的には身体加工を含む暴力、アブノーマルセックス、それに殺人や死への願望が描かれている。だがこの小説のもつ真の毒・魅力はそれらの表層の奥深くに埋め込まれていて、題材に依拠しているわけではないらしい。
 ポイントは二つ……
 一つは、タトゥーを入れたあと主人公がどうして生きる気力を失ってしまうのか。
 二つは、彼女はシバに対して最終的にどういう感情を持ったのか。
 作者はその二点に態度を表明していない。わからなかったから書かなかったわけではなく、わかっていたのに書かなかったわけでもない。
 彼女はこんなことは言わないだろう、彼女はこのシーンではセックスしないだろう、彼女はこうなったあとは食事できなくなるだろう、作者はそういうことを社会的な意識と本能的な感覚の境目で考えたり感じたりしながら、正確に書いていくのだが、不明なことは書いていない。不明というのは、作者が彼女の気持ちや言葉を想像できないということではなく、そういうときは彼女本人にも自分の感情や気持ちや言葉がよくわからないのだ。作者は登場人物たちをコントロールするわけではなく、登場人物たちに引きずられるわけでもない。書いている間、作者は登場人物たちと「共に生きる」のだ。彼らの言葉を聞くことがまず第一歩だが(私はこの段階)、その次に進むには、共に生きることだという。

 彼女は念願のタトゥーを入れたあと、どうして生きる気力を失うのか。トマス・ハリスの小説『レッド・ドラゴン』の殺人者は、香港で赤い龍のタトゥーを入れたあとに、トラウマを克服し強大な力を手に入れたような感覚を持ってモンスターとして生まれ変わる。タトゥーやボディピアスには、親から受け継いだ身体を傷つけ変形させ加工することによって「遺伝的・生物的な連鎖」を断ち切り、ある種の強さを手に入れるという側面があるという。その指摘に従うならば、彼女はその連鎖を断ち切る必要のない「いい子」だったという推測も成り立つ。でもそれはつまんない単なる推測かもね。
 最終的に女が男にどんな感情を持ったのか。永遠の謎だ。

 「私はクスクスと笑ってシバさんの顔を盗み見た。シバさんは、もう私を犯せないかもしれないけれど、きっと私のことを大事にしてくれる。大丈夫。アマを殺したのがシバさんであっても、アマを犯したのがシバさんであっても、大丈夫。龍と麒麟は目を見開いて、鏡越しに私を見つめていた。」
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