忍者ブログ

ALTEREGO

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


someday

 一体感。週末という名の免罪符は、しょうがないなという風潮の元、おつかれの働きマンが蔓延るこの東京にとって、一種の文化なのか。

 混雑した週末の揺れる終電、4分遅れで駅に到着。
 スーツを着こなす営業と思われる若い男女二人組み。奔放な会話に耳が寄る。会社での付き合いで、上司に対する女の酌が抜群だったと、男が女を評価している。「飲みたくない場所でもキヅカイができる子はいいよ。」「いやあ、全然大したことないですよ。」

 彼らを背に、ロングヘアーの女子高生が、学生バッグからアイ・パッドを取り出し、髪をかきあげイヤホンを付ける。日付けの変わる時間帯、制服を着た学生が電車に乗っていることに誰も違和感を示さない。皆、疲れている。彼女のイヤホンから音漏れはない。

 「学生の頃はよかったですよね、いやな人とは付き合いとか考えなくてよかったんだもん。やりたいことだけやって、好きな人と好きなことだけしてりゃよかったんだから。」「あの頃に戻りたいよねえ。」

 聞こえよがしの会話は、女子高生の耳に届くか否か。対しては、瞳を閉じ、聞こえない振り。
 車掌の案内と共にドアが開く。人の波はない。誰も降りないことを皆が同意する。
 不意に声が響く。「降ります」。女子高生の声。ドア付近の営業が脇にそれる。
 彼女の声に振り向く乗客と、彼女のあとに続く千鳥足の年配の男。
 白いものの混じった年配の酔っ払いを軽く見送り、下を向いたまま乗りなおす女子高生。少しバツが悪そうにして営業の女は道をあけた。
 急に発車する乱暴な運転、揺れる人並み。女子高生の足は掬われた。
 倒れかけた彼女を支える営業の女。はにかみ合う二人に、営業の男の笑顔がだらしない。
 ささやかな補い合い。気付かぬ気遣い。人という字。愛という字。

 垣間見えるドラマ。作り笑顔ではない彼らの笑窪の向こう側に、つらいことを耐えた自分たちへの小さなご褒美なのだと、素直に受け止める。人々が皆、素直になり、一体感を生んだと信じる。錯覚でもいいから、思い込む。
 素晴らしい世界。それでいい。

 歳の数を重ね、知識を蓄え、難しい言葉を覚え、苦難を経験し、自立し、物を語ることが、大人になるということじゃない。そもそも、大人というものが絶対じゃない。

 若くても、理解しようとする心を持ち、簡単なことばで愛を唱え、人の苦しみを分かち合い、景色や相手を目を閉じても感じることができ、自分らしい生き方を全うすることが、人として魅力ある生き物なのだと。

PR

COMMENT

Name
Title
Mail
URL
Color
Emoji Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Comment
Pass   コメント編集用パスワード
 管理人のみ閲覧

TRACKBACK

Trackback URL:
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
(12/10)
(08/13)
ANN
(05/19)
(04/04)
(01/05)
(01/03)
(12/24)
(10/20)
(10/09)
(08/21)
<<gray  | HOME |  artists>>
Copyright ©  -- ALTEREGO --  All Rights Reserved
Designed by CriCri / Photo by Melonenmann / Powered by [PR]
/ 忍者ブログ