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王子と姫

  出かけになにか忘れ物をしてる気がするときは、たいてい実際なにか忘れている。ガスか、電気か、鍵か、財布か、携帯か。それとも支払いか、本か、ipodか、ノートパソコンか。思い出そうにも絵が浮かんでこず、歩きながらでも思い出せればいいかとテキトーにてけてけ目的地に向かっていると、現地について初めてはたと思い出す。
 眼鏡ないおっていうwww。景色歪んでみえてたのは気のせいじゃなかったっていう。
 キホンOFF時、人と会うとき以外はキモ眼鏡をかけているのだが、この日は頭のなかではOFFではなく使い捨てコンタクトレンズを目に装着しているつもりだったのだ。そしていつものスクールカフェでノーパソ開くとき、私はもうひとつ忘れていたなにものかを思い出す。
 ノートのバッテリー残量8%だおっていうwww。何しにきたのっていう。
 全力でタイムアタック10枚弱を済ませ、傍らで汗をかきまくっているカフェラテを一気に飲み干す。
 やっぱりすべての行動は一連の動作でおぼえなくてはだめだと認識する。部屋に帰ったらうがい手洗いをする、米を研いだら炊飯器のスタートボタンを押す、使ったら携帯もノートも充電する。分かってはいるが抜けている。書くこと以外はながら行動に充実感をおぼえる体質なので、一から十をしっかりこなすのが苦痛でしょうがない。しかしバッテリー8%の絶望の程は、お湯を注いだペヤングやきそばをうっかり一時間放置するのと同じくらい深い。カゼをひいて健康を想うのと同じ原理だ。いやしかし、その原理がことわりを成すのであれば、私はまたいつかバッテリー地獄をこれから何度か味わうのだろう。しまいにはデータが飛んだりしてね。

 閉店間際の近所の薬局でジャスミン茶、ほうじ茶、ウーロン茶、麦茶、ミネラルウォーター、スポーツドリンクを両手一杯に買い込んで修行のごとく家路につく。エレベーターのボタンを押し、玄関の鍵をあけ靴を脱ぐとき、私はアイスクリームを買うのをまた忘れている。もうほんと意味がわからない。
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千秋万古

 「おまえらしい季節だ」と言われたことがある。興味ぶかいあてつけのような祝い文句にかぶりをふると、「忘れたころに冬ってもんがこの先にあるって脅す感じな。チョー性格ワルそうじゃね」と弁の立つ口で言う。
 ずいぶんな言い草に、眉間に川の字をつくりながら相手を置いてさっさと先を歩く。「褒めてるつもりなんだけど」と悪びれた態度で付け足されてもシカトし、背中にため息が続くのを無視しながらずんずん歩く。

 それがおもしろいことに、今になって、今度は私が冬の気配に気づくのである。改札前の人いきれ、七日目の蝉の鳴き声、祭ちょうちん、それらがいつの間にかなりを潜めどこか遠くへ消えてしまっている。青葉の変色、風の透明さ、行く先を求めるトンボ、早朝の吐息の白、それらが次の季節を予告する。それらの目立たない存在や仕事そのものが私のようだ、と言った言葉に唇を尖らせていた私は、しかし今になってニヤニヤしながら街を見渡しているのである。
 春のような出会いと別れ、始まりと終わりという大局を迎えるにふさわしい季節ではない。夏のようなエネルギッシュに満ちあふれたイベントラッシュもなければ、冬のようなインパクトあるセンチな思い出を作る時間もない。秋は地味なのだ。地味かつ短いのである。


光輪

 鉢の上に枯れおちた茎や葉をそうじする。今年の仕事を終えた彼らはこれからの季節を越えていくうちに土を硬くし、何をすることもなく、乾燥で輪郭のはっきりした景色に溶けながら沈黙する。

 虹を見た。二重である。私がダブルレインボーをこの目で見たのは、記憶が正しければ生まれてから三度目である。日本では7色といわれるそれの配色を、幼いころ私はよくクラスメイトと一緒になって順番に色を指し当てた。


フロンティア

 デスクの前でバランスボールに乗って前後する男、お茶をすすりながら休憩時間に女性誌をめくる女、デパートの保険紹介もずいぶんフランクになったものである。どちらかというと旅行会社のノリではなかろうか。

 図書館に本をかえしにいく。普段は用のないエリアに足をはこぶと新鮮である。奥まったところにある本たち、というよりも辞書のような分厚い冊子がずらりとならんでいる。フランス史、オーストラリア史、日本古事記、朝日新聞の総記録が黒い表紙をまとって大正から去年まで、通路奥まで続いている。一年に一人ぐらいしか手に取らないだろうそれらは、今日もだれかを待たずにひっそりと沈黙している。私は用もないのにある年号の冊子を探していた。私が生まれた年の新聞である。手にとると予想以上に重く足元のバランスを崩しそうになる。本を開いた時のかび臭さを予想していたが思った以上の無臭で、肌触りのよいページが数千と並んでいる。ゆきずりのスーツが私の後ろを通り過ぎたかと思ったが、男はある年号の冊子を手に取り私のうしろで立ち読みしている。調べものだろうか、それとも私とおなじ気まぐれだろうか。
 私が生まれた月、日のページが開かれる。なんだか、禁断の魔法書をひらく瞬間のような錯覚をいだく。私は見てはいけないものを見ているような気さえしている。

温度

 一般に開け放たれた季節外れの競馬場の砂場に、近隣の住民たちが愛犬を放している。日が落ち、蝶が飛び去る余韻に似たこうもりが散る中、大きなモニターでどこかの会場の馬が走る映像が流れている。観客席はじっくりと勝敗の行方を見守っている。
 会場外回りを一周し、もう一周すると真っ暗になったので切り上げた。半袖ではそろそろさむいのかもしれないが、風下にたってうしろから冬の気配を感じるのが好きだ。外気にさらした皮膚から熱をどんどん奪おうとする。肩に力が自然と入るが、意識的にリラックスをする。5つある脳派のうちの1つ、アルファー波は集中力の高さのなかにあるリラックス状態から得られるものらしい。無意識にだらーんとしている状態がリラックスだと思われがちだが、そうではないらしい。


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