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プンプンママ

 悲しい、嬉しい、をキャラクターが自らの口で訴える漫画が昔から嫌いだった、と作者が言った。彼がそう言った理由は、単に登場人物が泣いたり笑ったりするのを、悲しい嬉しいと語ることが嫌いと言っているのではなく、都合よく説明的であるのが嫌いと言っているのではないだろうか。そういうこともあってか、彼の作風からはエンタメというより純文の色がつよい。
 美しい景色、リアルな時間、偶然と必然、きれいごとと現実がすべて折り重なって、ない交ぜになっている。一見ごくごく普通の少年プンプンが、どこにでもいる一人の人間であり、また歪みをもった人間であり、この世界にただ一人として、歪んでいない人間なんかいないのだと暗に訴える作品だ。
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 原告、訴状陳述をするか否か。はい、と答える。
 被告、答弁書陳述をするか否か、再び裁判長が問う。はい、相手側はそう答えた。
 次回の期日が合意の上きまる。一回目は日程調整が主である。この場にプロ以外の人間はいない。


ぽち

 やりすく、と右側から文字を読ませる店が駅に向かう道中にある。となりにはいろんな野鳥を売る店の存在もあいまって、どこか戦前の田舎町をおもわせる構えは、しかし今日に至って存続が危ぶまれている。表の車道は駅に近づくにつれ二車線から四車線へと工事がすすみ、やがてその開拓は「やりすく」にまで及んでいった。手厚い謝礼もある、新しい転居先への手続きもすべて保障される、しかし「やりすく」はなかなか姿を消さなかった。古本屋が消え、焼き鳥屋が消え、コンビニエンスストアが消え、野菜売り場が消えて数年経っているにもかかわらず、「やりすく」と野鳥売りはずっと開いたままだった。

降誕

 寒波のなかに浮き足たった人並みを見つけると、ふいに子供のころの胸の高鳴りを思い出す。
 クリスマスといえばアジア人の感覚でいうと、24日から25日の二日間というイメージであるが、本場のヨーロッパでは具合が違う。クリスマスとは神が人間として生まれたことを祝う(キリストの降誕)の意が含まれるのは周知だが、子供たちが朝方リビングでプレゼントを見つけるのは翌年の1月6日なのだ。

夢破れて

 イギリスはスコットランド中部、ひっそりと静かに佇む聖母教会が田舎町にあった。
 少女は歌が好きだった。
 彼女にはいくばくかの障害が脳にありクラスメイトに「知恵遅れ」と後ろ指をさされたが、それでも無関心を決め込み授業を受け、それなりの成績を残し人間関係に折り合いをつけ自分の人生を受け入れた。
 学校が終わり人目から逃れるように校門を抜けると、涙を浮かべながら行きつけの教会に駆け込むのである。
 しかし彼女は悲観はしなかった。彼女には両親がいたし、祈るべき神がいたし、なにより歌を唄うよろこびを知っていたからである。不自由さを感じる前に、頭を上げてキャンドルの前で唄うのだ。かなしいときや、さびしいときに感じてしまう己の不幸を、父や母のせいにしてしまうのは自身の頭がよくないからだと自分を責めた。
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